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「絶対、最強の恋のうた」を久しぶりに読んで、絶対最強の恋はもう絶対できないと悟った話

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/pdmagazine

 

面白そうな企画があったので投稿してみます。

まず「青春の一冊」と言われて、はたして「いつ」を青春とするか悩みました。

語ることすら憚られる漆黒の中学時代?

部活に勉強、そしてくだらない仲間達と笑い合っていた高校時代?

でも世間一般の青春に対するイメージはやはり恋愛であり、それに触れるなら大学時代しかないんだなこれが!

ということで、大学に入学した19歳頃にハマっていた中村航さんの「絶対、最強の恋のうた」を題材にさせていただきます。

絶対、最強の恋のうた (小学館文庫)

絶対、最強の恋のうた (小学館文庫)

 

社会科教師のおでこのテカリ占いをしては大受けしていた陽気でマシンガンな中学時代から、クールで一目置かれる弓道部員の高校時代を経て、大学生になった私がしたことは、恋をすることだった。

付き合いはじめて三か月。

幸せすぎて自分を見失いがちな私は、ふと怖くなってしまう。

そのことを彼に告げると、とりあえず、毎日死ぬほど会う生活をやめ、デートは週末に一回、電話は週三回にするという提案を受けた。

トラックを全速で駆け抜けた日々のあとに訪れたのは、恋のスタンプカードを少しずつ押していくような、かけがえのない大切な時間だった。

18万部突破のロングセラー「100回泣くこと」に続く、初恋青春小説。

 Amzonが思いっきり「青春小説」と謳ってて笑いました。

ネタバレしない程度にざっくりまとめると、「地方で浪人した後に大学へ進学⇒恋に落ちて付き合う⇒恋愛初動特有の高まり⇒落ち着くか…⇒それにしてもくだらない友達は最高だな⇒なんだかんだ幸せな俺たち最強!」

 

すみません、破壊的にネタバレしました。

登場人物が突然の事故で亡くなったり、恋人が実は主人公が前世で命を救った魔法少女の生まれ変わりだったりとか、そんな劇的な展開はありません。

むしろオチもない、要するに「日常系ゆるリラ恋愛」を描いた小説です。

ちょっとだけ個人的な話をすると、作者の中村航さんとぼくは同じ岐阜県の出身!

地方の進学校を卒業して都会の大学へ進学したご経緯に勝手にシンパシーを感じてしまい、しかも「日常系ゆるリラ恋愛観」にまんまとハマったことで、同氏の小説をたくさん読み漁っていました。

「絶対、最強の恋のうた」はその歴史の一冊目なのですが、当時のぼくはせっかく東京の大学に出てきたのに授業サボるか彼女と遊ぶかばかりの毎日。

「こんなにダラダラしてて良いのかな…」と悩んでいました。

そんな状況で立ち寄った本屋でふと同書を目にし、「2000年初頭デビューの青春パンクバンドの曲みたいなタイトルだな」と思い即購入。

読み進めるうちに中村さんの繰り広げる「なんでもない毎日の美しさ」に魅せられ、彼女や友達と過ごすひとときを肯定できるようになりました。

 

あれから7年。

久しぶりに本棚から「絶対、最強の恋のうた」を取り出して読んでみたんです。

「…あれ?これで終わっていいの?」

率直に言うと、登場人物の織り成す恋愛模様に、当時の自分では気付かなかった「物足りなさ」を感じたのです。

主人公とその彼女は付き合い始めて順調に段取りを踏んだのですが、彼女が一抹の不安を感じたことで、恋人的な意味で半年間の「おあずけ」をすることに決めました。

加えて「毎日死ぬほど会う生活」を改め、「電話は週三回、デートは週末に一回」という約束も一緒に。

そうして迎えた半年後、それでもまだ「怖かった」彼女は三ヶ月間の延長を申し出るのです。

「てめえこのヤロウ!」とぼくは呟いてしまったのですが、主人公は何もためらうことなくアッサリと「いいよ、もちろん」って言うんですよ!

「ウソつけ!お前ホントにそれでいいのかよ!だってお前…さあ…」

「そういう意味」で浮かばれないこの世の全男子を代表して物申したくなりました。

総じて幼いというか非現実的だなと思ったのですが、少なくともはじめて読んだときはそんなこと思わなかったはず。

「購入した本の文章が勝手に変わる能力」なんてものを持っていない以上、変わったのはぼく自身でしかありません。

 

今年で26歳を迎えるぼくですが、この7年間でたくさんの恋愛を経験しました。

ときに喜び、ときに怒り哀しみ傷つくうちに、相手に求めるコトの質と量が変化したのでしょう。

昔のぼくは好きな人がいたら無我夢中に飛びついていましたが、今は「この場面はこう出ておけば後々はかどるな」みたく、打算的に考えることが多くなりました。

そして忘れてはならない、嫌でも離れられないのが「結婚」の二文字。

例えば良い感じの人がいるなーと思っても、「ぼくの地元で生活するなら付いてきてくれるかな?」「ぼくの年収で満足にやってけるかな?」というモノサシで判断してしまいます。

 

このように年齢を重ねるにつれ、恋愛に求めるものや自分自身のフェーズが大転換しました。

人に言えないぐらい汚いことをしたり、功利主義的な発想を持ったりもしました。

仮に青春時代の恋愛に不可欠な要素を「相手に対する想いの清らかさ」とするなら、ぼくの青春は終わったと言えるでしょう。

絶対最強の恋は、もう絶対できない。

「絶対、最強の恋のうた」がぼくの心に流れる日は、もう来ないかもしれない。

ぼくにとって大切な「青春の一冊」を読み返したことで、青春の終わりに気付いてしまった話でした。