「自分の好きなものを10年好きと言い続ける自信はあるか?」RADWIMPSのドキュメンタリー映画を観て思った4つのこと

自分の大切なモノや好きなことを否定されるのは、とても怖いです。

好きなものを◯か×かで評価され、ときには予想だにしないリアクションが返ってくることもあります。

例えば幼いころに戦隊ヒーローが好きだったとしましょう。

変身ポーズを練習したり、合体するロボットを買ってもらったり、オリジナルの技の名前を考えてみたり。

でも男の子には誰しも、戦隊ヒーローが「ダサくなる瞬間」が訪れます。

「お前まだ△△レンジャーとか観てんの?ダサっ!」と友達に言われ、大切にしていたおもちゃを押し入れにしまいこむ。

そんな経験がある男子は多いのではないでしょうか?

友人大勢が出した「答え」に乗っからないと、村八分にされてしまうのがコドモ社会。

結局その後もやることは同じで、△△レンジャーがポケモンになり、ブリーフがトランクスになり、コロコロコミックがジャンプになるんですけどね。

そうやって社会での生き残り方を学んだ僕たちは、中学生になるとオレンジレンジバンプアジカンになります。

そして高校生。

きっと多くの同世代がこの道を選んだ、あるいは「あえて選ばなかった」のではないでしょうか。

RADWIMPS

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*1

今さら言うことじゃないですが、2005年にメジャーデビューした彼らは、「青春の代弁者」として若者を中心に熱狂的な人気を誇るバンドです。

2010年に刊行され、ちょうどぼくら世代の高校生活を描いた小説「桐島、部活辞めるってよ。」でも彼らの名前が出てきますね。

ラッドウィンプスやん!歌詞めっちゃいいやろ?」

手垢のついていない言葉を散りばめた歌詞を、アゲたロック調、バラード、ラップといったバラエティに富むメロディに乗せて聴き手のハートを鷲づかみにする彼ら。

特に青春時代特有のセンチメンタルで甘酸っぱい、なんだかかゆくなるような気持ちを歌わせたら、他の追随を許しません。

褒め言葉です)

言ってしまえば分かりやすく、ぼくら世代の青春時代を象徴する存在なのではないでしょうか。

そんな彼らが昨年メジャーデビュー10周年を迎えたということで、海外ツアーや大物アーティストとの対バン、さらにはワンマンライブの模様とその裏側を追ったドキュメンタリーが上映されました。

radwimpsnohesonoo.jp

ぼくがこの映画を観たときは上映終了前日だったんですけど、盛況を受けてTOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ日本橋の2館にて、3.31までの追加上映が決定!

そんな延命されたこの映画、RADWIMPSを今も大好きな人はもちろん、「昔好きだったけど色々あって聴かなくなった人」にこそ観てほしいです。

前置きが長くなりましたが、「HE・SO・NO・O Documentary Film」がサイコーだったところをまとめていきますね。

1.「チームRADWIMPS」の仲の良さにホッコリできる

前半は昨年の10月からスタートした初の海外ツアーの裏側から始まります。

ファンの方はご存知でしょうね、ドラマーの山口智史氏がフォーカル・ジストニアという神経症で無期限の休養に入っています。

映画では今後のツアーのためにサポートドラマーを探していくのですが、その工程を通じて逆にメンバーの「山口氏への愛情」を感じました。

ボーカルの野田洋次郎氏を中心に、「サトシがいなくなったら俺たちはおしまいだ…解散しようかな…」と、カメラを前にめっちゃ落ち込んでるんですよ。

口から出るセリフこそカッコつけてますけど、その心境は親友をひたすらに心配するときのそれ。

あとこの映画を観てよかったなって思ったのは、メンバーだけじゃなくてその裏で動くスタッフにも焦点を当てているところ。

インディーズの頃からバンドを支えている方々のインタビューがあるんですけど、「この人たちRADのこと好きすぎるだろ」って、もはや笑ってしまいました。

すごくどうでもいいんですけど、スタッフ勢は「これ路上で会いたくないタイプだ・・・」と怯んでしまうほどのコワモテばかり。

そんなコワモテがRADWIMPSの音楽でエモがってるのかと思うと、いかに彼らが多種多様な人々を惹きつけるミュージシャンなのか分かりますね。

映像を通じて伝わってくるメンバー同士のRAD愛と、彼らをサポートする方々のこれまたRAD愛。

「ああ、俺もこんなメンツと働きてえなあ」って思います。

ちなみにこの映画が終わった後に会社の携帯が鳴り、「お前、明日俺の代わりに資料作って提出しといて。朝イチな。」と言われ、本当につらくなりました。

2.ビッグアーティストの歌うRADWIMPSのナンバーを劇場で体感できる

昨年の秋に開催した、きのこ帝国やクリープハイプ、ゲスの極み、LOVE PSYCHEDELICOハナレグミなどなどの著名アーティストとの対バンツアーの模様も観ることができます。

個人的にスピッツの会はマジで観に行きたかったんですけど、前世でよほどの悪事を働いたのでしょう、やはり落選済み。

だからこそ劇場で観られて本当に良かった…今世も悪くない…。

一部だけ紹介すると、

スピッツが歌う「叫べ」!

ワンオクが歌う「バイ・マイ・サイ」!

ミスチルが歌う「有心論」!

すみません、やはりネタバレです。

歌を聴いていて、彼らにしか表現できないバリューはもちろん、何よりもRADWIMPSへの敬意と愛が伝わってきました。

てか同世代バンドだけじゃなくて、スピッツミスチルもRAD聴くんですね・・・。

ミュージシャンになるには、どれだけの音楽を取り入れなければならないのでしょうか。

少し話がそれてしまいましたが、ライブ会場に負けないんじゃないかってぐらい劇場も迫力がありますので、一見の価値アリ!

あとこれは余談なんですけど、plentyの江沼氏がスクリーンでヌルヌル動いてRADのメンバーとキャッキャしてる絵は、本当にかわいくて最高でしたね…。

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3.「妖怪・野田洋次郎」のフツーさに気がつける

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はじめて野田氏の歌を聴いた時、「こいつはマジでヤバイ」というマジで頭の悪い感想しか出てきませんでした。

そのぐらい遠く離れたところにいるというか、とにかくこの人にぼくらは追いつけないんだろうなと。

「最大公約数」っていう曲があるんですけど、恋人同士の生きるペースの違いを公約数に喩えて、「無理に合わせるでもなく、必ずバチっと重なるところが二人にはあるから、しっかり仲良くやっていこう」って歌ってるんですよ。

なんやこの圧倒的表現力、みたいな。

ちなみにぼくの高校時代の恋愛を振り返ると、最大公約数どころか最小公約数(=1)でしかなくて、とどのつまり恋人がい(ダイイングメッセージはここで途切れている)

そんな野田氏は振る舞いやファッションセンスも独特で、マジで同じ人間だと思えないんですよ。

恐らく彼に対する世間の評価は「天才」なんでしょうけど、ぼくにとってはもはや「妖怪」なんです。

でも本作では彼の裏側に寄り添ったことで、妖怪の人間味に触れることができます。

「ねえねえ!インスタに何て投稿しよう!?」ってはしゃいだりとか、ライブの照明が意図するものと違ってプンスカ怒ったりとか。

中でも印象的だったのがスピッツとの対バンで、「ぼくが恋愛について考えるとき、ココロの真ん中にはいつもスピッツがあった」って言いました。

「ブルータス、お前もか」

妖怪・野田洋次郎も、恋するときはフツーにスピッツ聴いてエモがってるのかと思うと、なんや、同じ人間やんって。

もちろん彼が天才と言われるにはそれだけのバックグラウンドと途方もない努力があるのですが、その源泉はきっとフツーの感情であり、だからこそ独特な歌詞でも聞き手は共感できるんでしょうね。

恋愛をしているときの重くてドロッ!ヌメッ!とした感情とか、憎しみとか、社会に対する無力感とか、そこから見える儚さとか、そういう「当たり前」を叙情的に表現するからぼくらは惹かれてしまう。

一方で、すぐに「今晩のオカズ」って言っちゃったりする彼らのしょうもない下ネタも、ぼくは好きです。

ちなみにぼくの今晩のオカ(ダイイングメッセージはここで途切れている)

4.「あの頃のじぶん」を素直に受け止められる

最後はちょっと自意識過剰というか、思い込みが激しいかもしれないです。

でも、ぼくにとって一番重要なパートです。

ファンだから当たり前っちゃ当たり前なんですけど、上映中のBGMとか、演奏しているナンバーとか、ぜんぶ分かっちゃうじゃないですか。

RADWIMPS特有の不思議なところは、その曲を聴いた時に「思い出がフラッシュバック」してくるんですよ。

「あーっ!me me she!ギャーッ!!!」みたいな。

そのぐらいぼくらの歴史に打刻するような存在のはずなんです、RADWIMPSは。

なのに、それなのに、みんなRADWIMPSを好きだったことから目を背けている」ように思えてならないんですよ、ぼくは。

彼らは本当に素晴らしいバンドだと思うんですけど、前述したように重い恋愛の歌が多かったりするんで、いわゆる「病んだ女子ファン」が多いです。

しかも野田氏は声も言葉も容姿もファッションもやたら艶々しいから、ちょっとフリキレた熱狂的ファンもいます。

冒頭で「あえて選ばなかった人もいる」って言ってたのはこのためです。

そういえば映画館にも、「そういうファッション」に身を包み、野田氏の一言ひとことにオーバーリアクションしてる女人がいたっけか…。

ファンの振る舞いだけが理由だけなのかは分かんないですし、単純に飽きたって人もいるでしょうけど、人が離れていったことにすごく悲しい理由を感じずにはいられません。

「お前まだRADWIMPSとか聴いてんの?ダサっ!」という空気感になり、iPodからデータごと削除する、そんな経験がある方は多いのではないでしょうか?

しかもこのWEB時代、2ちゃんのまとめやSNSで必要以上のネガティブ情報を摂取してしまうから、勝手に「あーこれはダサいんだ」って風潮を作り上げてしまいがち。

でも、だからこそ、昔RADWIMPSを好きだった人はこの映画を観てください。

心の押し入れにしまいこんだ「恥ずかしいぐらい真っ直ぐでピュアなエモーション」を思い出せると、断言できます。

「ふたりごと」を聴いて、走って恋人を抱きしめに行きたくたくなった気持ち。

「俺色スカイ」を聴いて、失恋したことがどうでもよくなるまで友達とバカ笑いしたくなった気持ち。

「25コ目の染色体」を聴いて、大切な人との「未来」が愛おしくなった気持ち。

全部ぜんぶがあの瞬間の事実であり、今の自分を構成するかけがえのないピースです。

ファンがメンヘラだろうと、洋次郎がオサレだろうと、そんなの関係ないじゃないですか。

あの頃の自分に素直になることは、とても清々しいことです。

そういうことを考えながら映画館を出て、洋次郎の被っていた「つばの広いハット」を買おうと決意しました。

(似合わなかったらメルカリとかで売ります)

おわりに

長文に渡り読んで頂きありがとうございました。

映画の魅力というよりもRADWIMPSそのものについて語っちゃいましたね…。

終始偉そうに綴ってますけど、かくいうぼくも恥ずかしながら「世論」に負けそうになったことがあります。

そんなぼくを引き戻してくれたのが、2014年にひょんなことから観に行った彼らのツアー。

別に嫌いになったわけではないけど彼らの音楽から少し離れていたので、単純に「今どうなってるか」気になったんですよね。

懐かしのナンバーから最新曲まで、パワフルとセンチメンタルの往復ビンタ!

そして何よりも、最後のMCで野田氏が言ってたことが今でも忘れられないんです。

「ファンのみんなが”RADWIMPSが好き!”って周りに言っても、

恥ずかしくならないようなカッコイイ音楽を作っていきたいです。」

嫌でも世間の反応が見えてしまう現在、賢くてナイーブな彼らは自分たちへの反応に気付いてるんでしょうね。

にも関わらず、ポジティブもネガティブも全てをギュッと受け入れた覚悟が言葉の裏にあったから、「やっぱカッコイイわ!」って改めて思えました。

ぼくはこれからもRADWIMPSが好き!」って言い続けますし、ぶっちゃけRADWIMPSじゃなくても何でもいいんですけど、「10年経っても好きなものは好き!」と自信を持って言い続けましょう。

会心の一撃をアリーナで聴いて、まるで世界最強の主人公になったかのように何かを始めたくなった気持ちをいつまでも忘れずに。

そしゃ!