「あの日 僕がセカンドフライを上手に捕ったとして」燃え殻氏”ボクたちはみんな大人になれなかった”読みました
あの日 僕がセカンドフライを上手に捕ったとして
それで今も抱えてる後悔はなくなるのかな
十五年経ってもまだ捨てられない僕がいて
生活は続く 生活は続く
ASIAN KUNG-FU GENERATION の「新世紀のラブソング」という曲がある。
youtu.be
歌い出しのフレーズが印象的であり、自分の苦い記憶を想起せずにはいられない。
小学校6年生の8月、少年野球最後の大会に臨んだときの記憶。
守備とバントしかできなかった補欠の僕は、いつも通り途中出場でライトの守備についた。
相手は全国大会の常連で、前評判では優勝候補の筆頭チーム。
ところが僕らは善戦し、終盤までリードを奪う形で試合を進めていた。
2アウト2塁、打席には4番バッター。
後ろに下がっていた僕の前方にフラフラっと上がった打球を、前に突っ込んでなんとかショートバウンドで捌く。
しかし僕の投げ返したボールは、ファーストの遥か頭上。
その間にランナーが返って同点に追いつかれ、試合はそのままサヨナラ負け。
相手チームは順当に勝ち進み、県大会優勝、全国大会出場と華々しく勝ち進んだ。
あのとき悪送球をしていなければ、あと1歩でも前に守っていれば。
15年も前のガキの頃の話にも関わらず、未だに夢に見るほど心に染み付いたエピソードだ。
前置きが長くなってしまったが、Twitterで話題の燃え殻氏が執筆した「ボクたちはみんな大人になれなかった」という本を読んだ。
ストーリーは氏の自叙伝が大半を占め、仕事の遍歴や過去の恋愛がベースとなっている。
あいにく僕には、ブログに書けるほどカッコいい仕事のエピソードや情熱的なアバンチュールも無い。
真っ先に思い出したのは、アジカンの歌詞であり少年時代の後悔だった。
15年経っても夢に出てくる、ライトフライを掴めなかった僕。
2アウトまで追い込んで、どうして僕はボールを掴むことができなかったのか。
どうしてあんな、どうしようもない返球をしてしまったのか。
ちなみに同書は、「後悔」というキーワードだけで括れる話ではい。
「過去のおかげで今があるけれど、その間にあった出来事すべてを消化できた訳ではなくて、ただ寄り添うことしかできないや」という、煮え切らないエモーション。
その思いを象徴するように、こんなフレーズが同書にある。
「男は過去の自分に用がある、女は未来の自分に忙しい」
そんな主語のばかデカいつぶやきをツイッターに書き込みたくなっていた。
ここでは恋愛における男女の価値観の差異について述べることはしない。
しかし何事においても、「あの時こうしていれば」という後悔が、今の自分を形成していると僕は信じてやまない。
まだたったの27歳だけど、仕事も人間関係も夢も希望も、捕れそうで捕れないライトフライがたくさん飛んできたと思う。
その度に己のエラーを恨み、あの時あそこに守っておけば、しっかりボールを投げておけばと後悔を繰り返してきた。
この先の人生は長いだろうし、まだまだ打球は飛び続ける。
僕は今度こそ、このグラブで掴むことができるだろうか。
最後に。
同書はいくつかの章で構成されており、その中に「東京発の銀河鉄道」というものがある。
「銀河鉄道」と聞いて僕が連想するのは銀杏BOYZであり、この小説からして「漂流教室」という曲のフレーズを口ずさまずにはいられなかった。
このまま僕らは大人になれないまま
しがみついて忘れないんだ
君の涙をいつか 笑顔に変えてくれ
光る星に約束してくれ
あのライトフライを上手に捕れる日はもう来ないけれど、次は絶対掴みたいと思う。
だって野球は、2アウトから。